2016年04月07日

     このホームページの大半を書いている私(広報)は、2児の父親です。上の子は小2、去年から中野島学童ホールでお世話になっています。下の子は保育園の年長さん、来春から中野島学童ホールにお世話になりたいと思っております。

     ホームページ上では素性を明かさない様にしていますが、実はダメ父です。一年前は「小1の壁」という言葉なんて知らず、妻は一人で大きな問題に立ち向かっていました。当時、妻が問題を抱えていることは明らかでしたが、私は問題の全体像がつかめていませんでしたし、本質的な理解が不十分でした。相当反省しました。 

     そこで、来春にお子様が小学校へ入学するお父さんが同じ失敗をしない様に情報をまとめたいと思います。

     分担して壁を乗り越えられるお父さんはもちろん、忙しくてなかなか時間的な負担を負えないお父さんでも、お母さんの不安を理解し、共有することで事態は少しましになると思います。もしかしたら、仕事で様々な問題を解決しているお父さんだからこそ思いつくことのできる解決策が見えてくるかもしれません。

     まずは、「小1の壁」問題の存在を認識し、理解をいただければと思います。 

    さて、来春お子様が小学校へ入学するお父様方
     「小1の壁」の存在に気づいていますでしょうか?


     「小1の壁」とはどんな問題なのでしょう?

     「待機児童」という問題は、ご存じだと思います。保育園に入りたくても入れないご家庭が世の中にはたくさんあります。育児と言ったら、まずこの問題があがりますよね。
     そして、最近は「幼児虐待につながる育児不安、育児ノイローゼ、母親の孤独感」という問題も報道で取り上げられることが多くなってきたのでご認識がおありだと思います。幼児虐待は遠い世界の話ではなく、「加害者となる親の気持ちがよくわかる。下手したら、私も...」と小さな子を育てるお母さんの多くが言います。

      でも、社会で取り上げられるこれらの問題は「来春にお子様が小学校へ入学するお父さん」にとっては、既に過去のものと感じていたり、個人として解決すべき喫緊(きっきん)の問題から社会全体として解決すべき問題へと意識が変化しているかもしれません。 

     それでは次に、これまでご家庭で悩んでいたことを考えてみましょう。
     ・以前は、自分のやりたいことをうまく表現できず、泣いたり、怒ったりばかりでした
      →今では、自分の気持ちを表現することができる様になりました。

     ・以前は、こちらの言うことをなかなかわかってくれませんでした
      →今では、言うことをだいぶ理解できる様になりました。(言うことを聞いてくれるかどうかは別問題)

     ・以前は、季節の変わり目ですぐに体調を崩していました
      →今では、体力がつき、保育園をお休みすることも少なくなりました。

     ・以前は、トイレにいくたびに呼ばれていました
      →今では、一人で行ける様になりました。

     等々。これまでに体験した問題の多くは解消されたり、楽になってきたと思います。ですので、多くのお父さんが考えるのは小学生になってからのこととなります。

     小学校に入ったら、勉強が始まります。学校の勉強についていけるだろうか、入学前に「ひらがな」「カタカナ」ぐらいやっておくべきだろうか。
     運動もやらせたい。「野球」「サッカー」「スイミング」。頑張って何かをやり続けること、努力に見合った成果があること体感させ、学ばせるべきではないだろうか。体力も大切だし。
     あるいは、子どももしっかりしてきたから、イクメンモードから仕事ばりばりモードに戻すときか。子どもに労働の大切さを教えるべきだろうし、景気もなかなかよくならない中、主力世代である我々がもっと頑張らないと。

     このようなことばかり考え、「小1の壁」に気づかずに、私は失敗をしました。これまであげた中に「小1の壁」はありません。
     Googleで検索すると多数表示されますが、2012年7月現在、インターネット上の百科事典ともいわれる「ウィキペディア」に「小1の壁」は載っていません。その理由は、レアでめったに起きない問題ではなく、社会的な認知度がまだまだ低いからだと考えるのが妥当でしょう。 

    それでは、「小1の壁」とはいったい何なのか?【本質編】


     小1の壁は、様々な姿に変身して我々を襲ってきます。多様な問題に変化しますが、本質は次の2つの様に私は考えます。

     小1の壁【本質1】 「子どもを取り巻く環境が保育園から、小学校に変わる」影響
     小1の壁【本質2】 「(主に)お母さんを取り巻く環境が変わる」影響

     「環境が変わる」ということは、一般に強いストレスになると言われます。ですが、そういう精神的な問題ではありません。制度上、仕組み上の問題と私は思っています。「待機児童」の問題と少し似ているかもしれません。待機児童という問題は、保育園の数が少ないため、希望するすべての人が保育園に入れないという問題です。子ども自身、お母さん自身に原因があるというわけではなく、子どもやお母さんがコントロールできないところで発生する、社会の仕組みが現代の生活に追い付いていない、つまり制度整備の問題なのです。 

    小1の壁【本質1】 「子どもを取り巻く環境が保育園から、小学校に変わる」影響とは?


    【現在】
     保育園に朝連れていって夕方迎えに行くまでの間、子どもは完全に保育士さんの管理下にあります。
     保育園に子どもをお願いし、保育園の玄関を出た瞬間からお迎えまでの間、親は安心して仕事ができます。
     7時半に保育園の玄関を出て、18時半にお迎えに行っているのであれば、11時間もの間、保育士さんは「うちの子がどこで何をしているか」を知っています。

    【入学後】
     朝、家を出て小学校に行きます。お子様が通う小学校は集団登校がありますか?それとも1人で学校に行くのですか?お友達と行くのですか?
      家を出てから、朝のチャイムがなるまで、子どもは誰の管理下にも属さないのでは?
     集団登校という制度があれば良い方、上の学年の子が見てくれます。同学年のお友達と行く、1人で行く場合に、空白の時間が出てきます。

     放課後はもっと深刻です。
     1年生は上級生よりも終業時間が早いです。4時間終わり、5時間終わり。教室で「さようなら」をしたら、基本的に先生の管理下にはないのでは?
     「さようなら」をしてから「夜、親に会う」まで、子どもはどこで何をしていますか?
     子どもが見当たらないとき、「うちの子どこにいます?」って聞いてわかる人はいるのでしょうか?


     これが、「子どもを取り巻く環境が保育園から、小学校に変わる」ということです。保育園という仕組みは共働きの家庭にとって本当にありがたい制度、仕組みだったのです。
     それでは小学校入学後の制度、仕組みはどうなのでしょう?
     確かに子どもは成長していますが、3月まで保育園に行っていた子が、4月からいきなりこれです。不安ではないですか?   

    小1の壁【本質2】 「(主に)お母さんを取り巻く環境が変わる」影響とは?


    【現在】
     「すべての会社にある」とは決して言いませんが、子どもが保育園に通っていると「育児時短勤務」制度を利用できる会社があります。
     たとえば、通常は8時半始業、17時半終業の会社において、「育児時短勤務」を申請すると、残業が免除されたり数時間の短縮勤務などができる制度です。
     これを利用して、7時半に保育園に子どもを預けた後、1時間半通勤して定時から30分遅れの9時に出社、帰りは同僚より30分早い17時に会社を出て、1時間半電車にのり18時半にお迎えです。
     でも、ただでさえギリギリなのに、雨なんかふったりするとさらに働く時間は削られます。

    【入学後】
     育児時短勤務がある会社でも、その多くは小学校入学後は制度を利用できなくなります。
     8時半に出社するために、7時(子どもが家を出る前)に家を出る。早くて定時退社(17時半)、これで家につくのは19時。残業があれば時間はどんどん遅くなる。子どもが誰の管理下にも属さない時間が増えるのです。
     弟や妹がいて保育園に通っていれば、時短を続けることもできますが、一人っ子、下の子となれば、時短は使えなくなります。


     これが、「(主に)お母さんを取り巻く環境が変わる」ということです。
     小学校低学年になっても時短をとれる会社も少しずつ増えてきましたが、まだまだです。そして時短とお母さん自身の仕事上のキャリアデザインとの兼ね合いもあるでしょう。 

    「小1の壁」は、ひとまずご家庭として対峙すべき喫緊(きっきん)の課題である


     フランスなどでは育児と仕事を両立できる様な仕組み、制度があるそうです。思想的にも働き方の多様性に対する価値観が確立しています。ダイバーシティってやつです。
     それに比べ、日本は制度面、思想面でまだまだ改善の余地がたくさんあります。
     でも、一番上に書きましたが、「小1の壁」問題の認知度は低いのです。子育て世代を支援する気持ちはあるのでしょうが、広く認識されている待機児童ですら十分に解決されていないのです。

     これが、深刻な「小1の壁」です。4月からこの壁が皆様のご家庭にたちはだかるのです。
     本来は、社会全体として解決すべき問題なのかもしれませんが、4月に向けご家庭として対峙すべき喫緊(きっきん)の問題なのです。 

     私の母親(うちの子にとってのおばあちゃん)は、出産のために仕事を辞めたそうです。辞めた時は、子どもが大きくなって手がかからなくなってから働こうと考えていました。
     でも、再び外で働き始めたのは、3歳下の私の弟が小学校4年生になってからです。私の母親が私を育てていた頃も似たような問題はあったと思うのです。当時、小学校高学年で母親が働きに出ている子どもは「かぎっ子」と呼ばれていましたが、「小1の壁」は「かぎっ子」とはまた違う気がします。低学年であるからこその問題だと思います。そして、私が子どもの頃と違い、事態をより深刻化させているのが、社会が昔よりも安全ではなくなったということです。 



     お父さんのための「小1の壁」講座 その1<問題認識編>はこれで終わりにしましょう。
     また、機会をあらため、様々な「小1の壁」、問題の多様性について具体的に掘り下げていきたいと思います。
     そして、その後、解決の方向性についての記事を書くことにします。

    [注:本記事本文は、2012.7.15に掲載されたものです]